相撲力士と浴衣、歌舞伎役者と浴衣

こんにちは。今回は日本の国技で、着物とも密接な関係のある相撲と浴衣の関係、そして日本の伝統芸能である歌舞伎と浴衣の関係についてお話ししたいと思います。

まず、相撲力士と浴衣の関係についてです。

相撲力士の浴衣

相撲は、奇数月の1月、3月、5月、7月、9月、11月に本場所が開催されていますが、その春から秋にかけての(主に5月の夏場所、7月の名古屋場所、9月の秋場所)は、場所帰りの際に力士が浴衣を着ていることが多くあります。

また、その間の偶数月に開催される巡業では、8月の夏巡業、10月の秋巡業の際にも、浴衣姿の力士を見ることができます。

それらは色、柄もさまざまで、部屋名や四股名が入っている物もあり、見ている私たちの目を楽しませてくれますね。

力士の着ている浴衣の柄は、どのように決まって、作られているのでしょうか。

相撲界での浴衣は、力士がお中元として他の力士に浴衣の反物を送るのが習わしとされています。


過去同時期に入門した、または先輩後輩の関係であった、または同じ部屋の出身だったなど、理由はさまざまですが、力士が他の力士に自分の四股名や部屋名が入った浴衣の反物を送り、送られた力士はそれを使って浴衣を仕立て、場所帰りや巡業の際に着ているのです。

他の力士からの反物を仕立てて着ているのですから、例えば四股名入りの浴衣を見て、それを着ている力士の名前だと思ってしまうのは、本来は間違いです。

しかし最近は、自分でデザインした浴衣を自分で着る、という力士も増えてきています。
昔はナンセンスだと言われそうな風潮ですが、時代が変わり、今はファッションの一つとして受け入れられているようです。

ところで、力士の番付には、幕内(横綱・大関・関脇・小結・前頭)と、それ以下の十両、幕下、三段目、序二段、序の口というものがあります。
自分の四股名を浴衣に入れられるのは、幕内力士以上というきまりがありますので、四股名があれば、その力士は(他の力士が着ていてもその名前の力士は)幕内(前頭以上)ということになります。

こういった事情を踏まえて、その浴衣を着ることの経緯や、浴衣に書かれた四股名と着ている力士の関係などを考えながら力士の浴衣に注目してみるのも、面白いかもしれません。
それがわかれば、もっと力士や相撲の取り組みを見る楽しみが増えますね。

次に、歌舞伎役者と浴衣の関係についてです。

歌舞伎役者の浴衣

歌舞伎は日本の古典演劇で、せりふと音楽、舞踊が一体となって展開されていきます。それに出演している役者さんが着ている歌舞伎衣装は、一般の人でも着る振袖や小袖はもちろん、武士の正装である裃(かみしも)や格式高い大紋、歌舞伎独特の衣装である四天(よてん)など、さまざまな種類があります。鮮明な色使いの物も多く、見ていて楽しいものです。

しかし、浴衣は歌舞伎の際に着るものではなく、あくまで楽屋の中で着るものになります。
楽屋浴衣ともいい、楽屋で出演の支度を整えるとき、あるいは出番が終わってくつろぐ際に浴衣が着られます。
柄は、自分の屋号や家紋などを染め抜き作られることがほとんどです。その浴衣地を、贔屓筋のお客様への配り物にすることもあります。
また、役者柄といって、歌舞伎役者自身が考案したものや、演目で着用されそれが流行したものがあり、浴衣の柄にも使われています。
次から主な浴衣の役者柄をご紹介します。

<浴衣に使われる主な役者柄>

鎌輪奴(かまわぬ)文様

七代目市川団十郎に関係する。
鎌の絵と輪、ひらがなの「ぬ」を使い「かまわぬ」と読ませている。

菊五郎格子

三代目尾上菊五郎が演じた「義経千本桜」の演目の衣装。
四本筋と五本筋の格子に「キ」と「呂」の字で「キ九五呂」と読ませている。

芝翫縞(しかんじま)

三代目中村歌右衛門(初代中村芝翫)の俳号。
四本の縞に鐶(箪笥などの引き手)を配したもので、四鐶=芝翫となっている。

斧琴菊(よきこときく)文様

三代目尾上菊五郎が衣装に好んで使った文様で、小型の斧(=よきという)と琴、菊で「良き事聞く」と語呂合わせになっている。

高麗屋(こうらいや)格子

四代目松本幸四郎が、「鈴ヶ森の長兵衛」に扮したときの合羽に用いた柄。
太い縞と細い縞を交互に組み合わせた縦長の格子文様。

三つ大縞(三津五郎格子)

三代目坂東三津五郎が家紋の三つ大にちなんで考案した。
三筋の縞と大の字をデザイン化したもの。

六弥太(ろくやた)格子(三升繋ぎ紋)

八代目市川団十郎が「一の谷武者絵土産」の演目で岡部六弥太に扮し、裃の定紋に三桝を用いたことから作られた。
三つ重ねた三桝の四隅を順につなぎ合わせ連続した文様になっている。

市村格子

十二代目市川羽左衛門が考案。
一本の横縞と六本の縦縞、ひらがなの「ら」で「一六ら(いちむら)」と読ませている。

中村格子

縦横三本ずつの格子(足して六本で「む」の意味)の中に「中」と「ら」を配した柄。
縞は六本ずつの場合もある。

播磨屋(はりまや)格子

二本の縦縞(張り)に「満」の字、八本の横縞で「はりまや」と読ませている。

仲蔵縞

江戸時代天明のころの初代中村仲蔵が、「千代始音頭瀬戸」の演目でどてらに用いた柄。
仲蔵の家紋の源氏香より考案された。人の字形(h形)を三列並べて、縦に太い縞を配している。

彦三郎縞

四代目坂東彦三郎が考案。
カタカナのヒとコを繋げて、三本の縦筋を配している。

いかがでしたでしょうか。

相撲の力士と浴衣の関係、歌舞伎役者と浴衣の関係についてお話してきました。

それぞれに作られた由来や着る場所は違いますが、力士も歌舞伎役者にも、浴衣は身近な存在として愛用されているのですね。

相撲力士や歌舞伎役者の浴衣は、私たちが普段身に付ける浴衣とはまた違った背景があってとても興味深いです。


相撲観戦や歌舞伎観劇を趣味とする方以外は、なかなか触れられる機会も少ないと思いますが、それぞれの浴衣にまつわる知識も知っておけば、より相撲や歌舞伎の世界が楽しめますね。

相撲の方はテレビで映る機会もあると思いますので、春から秋にかけては、ぜひ浴衣にも注目してみてください。

ちょっとしたことですが、知っておけば周囲の人に自慢できるかもしれません。
周りにいる着物好きのお友達にも、ぜひ教えてあげてくださいね。

参考サイト
ビバ!江戸
http://www.viva-edo.com/komon/komon_kabuki.html
着物あきない
https://kimono-akinai.com/kabuki-pattern/

(最後に)きものレシピというきもの専用のコーディネートWebサービスを作っています。たくさんの着物の着姿がみられますので、よろしければご覧ください。