季節に合わせた着物の装い①

こんにちは。

今回は、季節に応じた着物の装いについてお話ししたいと思います。

日本には四季があり、それを意識した着物の着こなしをするのはとても大事なことです。面倒ですが、そこに手間をかけることによって、日本人の粋や奥ゆかしさが出るのだと思います。着物ならではの奥深いおしゃれを楽しむためにも、しっかり勉強しておきましょう。

着物には洋服と違って夏のデザイン・冬のデザインなどがなく、一年中同じ形状です。

例えば洋服なら夏の半袖、冬のタートルネックなど、形状で暑さ寒さに対応できますが、着物にはそれがありません。その分、着物は仕立てや素材で季節感を表現します。

着物の仕立ては、1枚の生地で仕立てられた単衣(ひとえ)と表地と裏地が2枚合わせて仕立てられた袷(あわせ)、夏の素材の薄物に分けられます。6月は“春単衣”、9月は“秋単衣”とも呼ばれ、色味などが季節に応じて違います。

どの時期にどの着物を身に付けたらいいのか、次から見ていきましょう。

単衣

6月と9月に身に着ける着物です。単衣とは、胴裏(着物の胴回りについている裏地)、八卦(胴裏より下の裾部分と、衿先、袖口についている裏地)がなくて、1枚の生地で仕立てられている着物のことです。お尻の部分の補強や透け防止に「居敷当て」という布がつけられた単衣の着物もあります。

基本的なルールは6月と9月になりますが、5月でもかなり暑い日などに単衣の着物を身に着けることはよいとされています。着物は季節を先取りするのが粋だという面もありますので、TPOに応じて多少時期がずれた装いをしても問題ないでしょう。その日の天候に合わせて、素材を先取りしてみるのもいいかもしれません。

夏物

7月と8月の盛夏に着る、素材が絽、紗、麻などの薄い素材で仕立てられた着物のことです。単衣で透け感のあるものや、色が涼しげなものが多いのが特徴です。中には真っ白な襦袢を着用し、清涼感を出します。夏物は自分も涼しく過ごすことができるうえ、周囲にもさわやかで涼しげな印象を与えることができます。

10月から5月まで着られる、表地と裏地の2枚で仕立てられた着物のことです。着られる時期が長いので、色や柄によって季節感を演出します。透けない表地に胴裏、八卦の裏地を縫い合わせ寒い時期も着られるようになっているので、一番活躍頻度が高く、持っている人が多い着物と言えます。

こちらも9月の寒い日に袷を身に着けるなど、多少のずれは問題ありません。また、近年は温暖化の影響か10月でも暑い日が続くことがあります。気候や場面に合わせて、10月に単衣を身に着けることも多くなってきているかもしれません。先取りや季節が過ぎた後に単衣を身に着ける場合は、TPOやその柄、色味などに注意しましょう。

単衣の例外

ウールや木綿の着物は、7月8月の盛夏以外一年中着られる着物です。普段着として気軽に着られるため、主に単衣仕立てになっています。こういった着物は、10月から5月の間に着ても問題ありません。フォーマルな場にはもちろん不向きですが、家や近所で楽しむ分には着心地も楽で便利です。

このほか、冬は袷の着物の上にコートや道行などを身に付けたり、羽織を羽織ったりして寒さを防ぎます。何にでも合う色味のコートや道行を1着持っておくと重宝しますよ。

また、家庭着としての浴衣は、主に夏の夕涼みの際に着られるため、季節は7月8月の盛夏が適しています。木綿の1枚仕立てで基本襦袢などは付けずに素肌や下着の上に着るものですので、それ以外の時期は寒くて着られないと思います。今は夏祭りでおしゃれとして着られることが多いので、ほぼその時期に集中すると思いますが、9月上旬のまだ暑い日のお祭りや花火大会などには着て行っても違和感ないでしょう。