成人式の着物

こんにちは。今回は、成人式の着物についてお話ししたいと思います。

成人式の着物

毎年1月の第2月曜日に制定されている成人式。

当日は街で振り袖姿の女性を見かけることが多いと思います。

色とりどりの振袖を身に付けた若いお嬢さん達の姿は、とても華やかで見ている方も楽しいですよね。

また、最近は袴姿の男性も多く見かけるようになりました。


では、この成人式に着物を着る、という風習は一体いつから始まったのでしょうか。

成人式の由来は、奈良時代以降に行われた「元服(げんぷく)」という儀式といわれています。


これは男子の成人式にあたり、数え年で12~16歳の貴族の男子の前髪を落として冠や烏帽子を着け、着物を大人の物に改めました。


一方女子は、「裳着(もぎ)」という儀式が成人式にあたり、同じく12~16歳の公家の女子が、腰から下にまとう衣服を身に付け、髪を大人の女性にものに結い上げる「髪上げ」というものが行われました。

しかしこれらは上流階級の人々のしきたりであることが多く、庶民には浸透していませんでしたが、庶民の成人式として13歳前後の男子にふんどしを締めてお祝いする「褌祝い(ふんどしいわい・へこいわい)」というものが行われていて、これも成人式の由来となったといわれています。

このように昔は20歳よりかなり若い年齢で成人式が行われていたようですが、成人式を現在の20歳でお祝いするようになったのは太平洋戦争後になります。


1946年に埼玉県の蕨市で、戦後の疲弊した社会情勢の中で若者を激励しようという「成年式」というものが行われ、これが全国に広まり、今の成人式の形になりました。

そして1949年に1月15日が「成人の日」として定められ、その年度に20歳になる人を成人としてお祝いするようになったのです。(その後2000年に、現在の1月の第2月曜日に改められました)

また、地域によっては3月に成人式を行う地域もあります。
大学生の春休みで人が集まりやすく、気候的に着物で出席しやすいという理由から新潟県では3月に成人式を行うところもあります。
降雪の多い東北では、夏休みの8月に成人式を行う地域が多く、秋田県の8割の市町村が8月に成人式を行っているそうです。この場合は東北といってもさすがに暑いので、洋服で出席する人が多いようです。

では、成人式に振袖を着るようになった背景はどんなものだったのでしょうか。

振袖は、江戸時代に着られていた小袖と言う着物が、所作が美しいなどの理由からだんだん袂が長くなっていき、現在の振袖の形になったといわれています。そして様々な晴れがましい場で着られるようになり、未婚女性の正装となっていきました。


また、昔は18歳になると袂の袖を切って留袖にし、大人として迎え入れられたということから、振袖はミスの正装、留袖はミセスの正装と考えられるようになりました。

そして成人式は「冠婚葬祭」の「冠」にあたり、最も格式が高い場である、ということから正装である着物で臨むのがマナーという風習になったのです。

また、振袖は若い女性の着物、というイメージが強いですが、昔はその長い袖が魔を祓う、厄除けになるとし、子供に振袖を着せていました。

成人したことを祝福し、氏神様にこれまで無事に成長できたことに感謝の気持ちを表すと同時にこれからの大人としての幸せな人生を祈願し、子供を励ますために、親が神聖なものであり、晴れ着である振袖を着せてあげるという意味もあるのです。

ここで、振袖の種類について少し触れてみましょう。
振袖には大きく分けて大振袖中振袖小振袖の3つがあります。
それぞれの特徴と着用シーンは次の通りです。

大振袖

本振袖とも言い、袂の丈が110cm以上あるものをいいます。最も長いのは花嫁衣裳で、袂丈は125cmにもなります。まさに「晴れ着」で、成人式の正装として最もふさわしいです。

中振袖

袂の丈が90cm前後のものをいいます。大振袖ほどの華やかさはないため、主に卒業式の袴の下に着ることが多いです。また、身長の低い女性は大振袖だと袂を引きずってしまう可能性が高いことから、成人式に中振袖を着る方もいます。

小振袖

大振袖、中振袖よりも袂丈が短く、80cm前後の物をいいます。訪問着や留め袖の袂丈が60cm前後なので、短い振袖といえます。こちらも学生の卒業式などで着られることが多いです。

いかがでしたでしょうか?成人式の由来や、着物を着るようになった背景、意味などについてお話してきました。


成人式は、ここまで育ててくれた親に無事に成長した姿を見せ、大人になったことを喜び周りに感謝する、昔から続いてきた儀式です。

そして、これからは1人前の大人としてしっかり生きていこう、という決意を改めるいい機会でもありますね。

また、今まで子育てを頑張ってきた両親が、子育てにいったん一区切りをつけることができる、親のための儀式でもあります。
日本の伝統文化として定着している成人式。これからもその風習が長く続いていってほしいと思います。

そして振袖が着られるのは未婚女性の特権なので、未婚の女性の方は今のうちに素敵な振袖をたくさん着ておきましょう。


若いうちにしか出せない美しさ、華やかさというものはやっぱりあります。
その一方で、歳を重ねたことで出せる美しさや華やかさもありますし、着物を着ることによってその魅力が引き出されることも多いものです。
そのように、いつの年齢でも楽しめるのが着物の1つの魅力だと思います。

当日は振袖や袴などで艶やかに祝い、成人式を迎える本人も、その家族の方も幸せな気持ちで過ごせる1日にしたいですね。